Press Ctrl + D (Windows) or ⌘ + D (Mac).
聴安万善吹觱篥歌
亀茲の西域よりぞ伝え来し。
中原に響き渡りて曲はいよいよ妙なり、
涼州の胡人わがために吹き鳴らす。
隣り合う人々は息を呑みて嘆息し、
旅ゆく客は故郷を偲びて涙雨を流す。
世の俗人は音曲を聞けども真の妙味を知らず、
吹きすさぶ嵐のごとく風中をひとり往来す。
枯れにし桑や老いたる柏は寒々と寂寥の声を立て、
九羽の雛鳳は乱れて啾々と鳴き交わす。
龍の吟じ虎の吼ゆるが一時に発し、
万の響きと百の泉が秋の気配を共にする。
ふたたび曲は変わりて漁陽の激しき鼓と打ち鳴り、
黄雲は蕭条として白日も光を失う。
転調すればあたかも春の楊柳を聞くがごとく、
上林の繁り咲く花は眼を新しく照らし出す。
大晦日の高堂に明かりの燭を列ね、
一杯の美酒と一曲の調べに世の憂いを忘る。
流傳漢地曲轉奇,涼州胡人爲我吹。
傍鄰聞者多歎息,遠客思鄉皆淚垂。
世人解聽不解賞,長飆風中自來往。
枯桑老柏寒颼飀,九雛鳴鳳亂啾啾。
龍吟虎嘯一時發,萬籟百泉相與秋。
忽然更作漁陽摻,黃雲蕭條白日暗。
變調如聞楊柳春,上林繁花照眼新。
歲夜高堂列明燭,美酒一杯聲一曲。
流伝して漢地に曲は転た奇なり、涼州の胡人のために我に吹く。
傍らの隣人聞く者は多く歎息し、遠客は郷を思いて皆涙を垂る。
世人は聴くを解して賞するを解せず、長飆風の中に自ら来往す。
枯桑老柏寒颼飀、九雛鳴鳳乱啾啾。
龍吟虎嘯一時発、万籟百泉相与に秋。
忽然と更に作す漁陽の摻、黄雲蕭条として白日暗し。
変調は楊柳の春を聞くが如く、上林の繁花は眼を照らして新たなり。
歳夜の高堂に明燭を列ね、美酒一杯声一曲。