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迷神引
楚の国の南岸にしばし錨を下ろす。
寂れた城の黄昏の角笛が異郷の胡笳の嘆きを呼び覚まし、
水面は茫々と広がり、砂州の雁が驚いて飛び散っていく。
冷え切った森には霧が立ちこめ、まるで描かれた屏風が広がるよう。
天の果ての遠い山々は小さく、淑女の淡い眉のように重なる。
かつての楽しみを軽やかに捨て去り、いまや旅の役人としてここにいる。
旅路の労苦を身に染みて感じ、年月の過ぎゆくのも晩秋となった。
異郷の風物に耐えつつ、荒涼とした景色を愁いの目で眺める。
都は遠く離れ、遊興の楼閣は阻まれ、旅の魂は乱れる。
芳草は果てしない虚空に続き、夕日の残光が満ちわたる。
いとしい人からの便りはなく、ちぎれた雲だけが遠く漂っていく。
暫泊楚江南岸。
孤城暮角,引胡茄怨。
水茫茫,平沙雁、旋驚散。
煙斂寒林簇,畫屏展。
天際遙山小,黛眉淺。
舊賞輕拋,到此成遊宦。
覺客程勞,年光晚。
異鄉風物,忍蕭索、當愁眼。
帝城賒,秦樓阻,旅魂亂。
芳草連空闊,殘照滿。
佳人無消息,斷雲遠。
暫く楚江南岸に泊す。
孤城の暮角、胡笳の怨みを引く。
水茫々として、平沙の雁、旋たに驚き散る。
煙は寒林の簇を収め、画屏展ぬ。
天際の遙山小さく、黛眉浅し。
旧賞軽く抛ち、此処に到りて遊宦と成る。
客程の労を覚え、年光晩し。
異郷の風物、忍びて蕭索たる、愁眼に当る。
帝城賒かに、秦楼阻まれ、旅魂乱る。
芳草空闊に連なり、残照満つ。
佳人消息無く、断雲遠し。