Press Ctrl + D (Windows) or ⌘ + D (Mac).
白雪歌送武判官歸京
胡天の八月すでに雪が乱れ飛ぶ。
驚くなかれ一夜のうちに春風が吹き抜け、
千樹万樹の木々に梨の花が咲いたかのよう。
真珠のすだれをくぐりて羅の幕を濡らし、
狐の毛皮も温もらず錦の布団は薄寒し。
将軍の角弓は固く引き絞ることもできず、
都護の鉄の鎧は凍りついて身にまといがたし。
砂漠の果てまで百丈の氷が張りつめ、
憂いの雲は薄暗く万里の空に凝り固まる。
中軍に酒を設けて帰郷の客を送れば、
胡琴や琵琶、さらに羌の笛の音が響き合う。
夕雪はもうもうと陣門の旗を打ち下ろし、
寒風は赤旗を凍てつかせてはためかせない。
輪台の東門にて君を見送り、
旅立つその道は天山の雪に埋もれている。
山は巡り道は曲がって君の姿は見えなくなり、
ただ雪の上に馬の足跡だけが空しく残されている。
忽然一夜春風來,千樹萬樹梨花開。
散入珠簾濕羅幕,狐裘不煖錦衾薄。
將軍角弓不得控,都護鐵衣冷難着。
瀚海闌幹百丈冰,愁雲黲淡萬裏凝。
中軍置酒飲歸客,胡琴琵琶與羌笛。
紛紛暮雪下轅門,風掣紅旗凍不翻。
輪臺東門送君去,去時雪滿天山路。
山迴路轉不見君,雪上空留馬行處。
忽然として一夜春風来たり、千樹万樹梨花開く。
散じて珠簾に入り羅幕を湿し、狐裘暖かならず錦衾薄し。
将軍の角弓控うるを得ず、都護の鉄衣冷えて着難し。
瀚海闌干として百丈の氷、愁雲黲淡として万里凝る。
中軍置酒して帰客に飲み、胡琴琵琶と羌笛。
紛紛たる暮雪は轅門を下り、風は紅旗を掣して凍えて翻らず。
輪台の東門君を送って去り、去る時雪は天山の路に満つ。
山は回り路は転じて君を見ず、雪の上に空しく留む馬の行く処。